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たんぽぽ薬局の「おもい」を届けるメディアです。

服薬期間中のフォローと病院連携で地域の医療をより良くしていきたい

井村 祐花 大同店
2016年入社 愛知学院大学卒業

石部 泰成 大同店
2021年入社 神戸学院大学卒業

改正薬機法で示された服薬期間中のフォローの義務化。
たんぽぽ薬局では患者さまの服薬期間中に電話でのフォローを実施し、ヒアリングした内容をトレーシングレポートにまとめて医療機関へ情報提供しています。
今後の薬局に必須の機能として、採用課小松が若手・中堅の薬剤師にこの取り組みについて話をうかがいました。

テレフォンフォローのきっかけは困っている人のためになること

小松:今日はお二人が積極的にテレフォンフォローに取り組んでいるとうかがいお話を聞きにきました。石部くんは1年目ですが、どのように患者さまへアプローチをしているのでしょうか?

石部:投薬の時に話をしていて、フォローが必要そうな人には「電話しましょうか」と聞いています。

小松:必要そうな人というのは?

石部:困っている人ですね。飲み方や飲み忘れなどで困っている人、あとは薬の服用を不安に思っている人に声をかけています。
この前対応した患者さまは、以前に副作用で薬疹が出ていて、アンブロキソール(去痰薬)の服用を不安がっていたんですね。
その患者さまに「以前の状況を教えてもらえますか?飲みやすい薬に変更できるか確認しましょうか?不安なら一週間後にぼくが電話して薬疹が出ていないか確認させてもらってもいいですか?」とアプローチしました。
このケースの処方は去痰薬だったので副作用のリスクは少なかったかもしれませんが、実際に服用をする患者さまのためになればと思い声をかけました。

小松:副作用の心配が少なくても服薬期間中に電話することで、万が一副作用が起きていた場合には早い段階で治療に介入することができるから、念のためでも服薬期間中のフォローを実施することは大事になりますね。

石部:そうですね。テレフォンフォローを提案することで安心して薬を飲んでくれるのであれば、気持ちの面でのフォローにもなっているのではないかと思います。

井村:私は抗がん剤治療中の患者さまで病院の依頼を受けて声をかけることが多いです。
依頼がなくても最近だと抗がん剤治療中で初めて麻薬が処方された方がいて、ご家族がしっかりと話を聞いてくれたので「よかったらフォローさせてください」と声をかけました。
その後テレフォンフォローを行い、ヒアリングした情報をトレーシングレポートにまとめて病院に提出して「服薬情報等提供料」を算定しました。

テレフォンフォローと病院連携でよりよい治療につながる

小松:井村さんはテレフォンフォローだけでなく、その後の病院との連携も実施しているんですね。どういう流れで連携をしているのでしょうか?

井村:まずは投薬口で患者さまに「○○日後に電話してもいいですか?」と確認して電話をしています。
その後も電話して終わりではなく、ヒアリングした情報をトレーシングレポートにまとめて医療機関へ提出することで「特定薬剤管理指導加算2」「服薬情報等提供料」の算定につなげています。
ただ現在は算定要件を満たせていなくても、まずはテレフォンフォローに挑戦することが大事だと思います。

小松:実際にテレフォンフォロー後のトレーシングレポートを提出することで、より良い治療につながったケースはありますか?

井村:先ほどお話した麻薬処方中の患者さまのケースでは、テレフォンフォロー時にご家族から本人の嚥下が低下していて薬が飲みづらかったと相談を受けたので、トレーシングレポートには次回から粉薬への剤形変更をお願いしました。
他にも、抗がん剤治療中の患者さまへテレフォンフォローをしたところ、嘔吐、下痢による副作用から脱水症状を引き起こしている可能性を感じたので、すぐに受診するようお伝えして、先生へトレーシングレポートを提出したこともあります。その患者さまは翌日受診されて抗がん剤の減量、対症療法の薬剤追加につながりました。

石部:ぼくはまだトレーシングレポートの提出まではしたことがありませんが、先ほどの薬疹のフォローをした患者さまからは電話でこんなに感謝されるのかと思うくらい感謝されて、フォローできてよかったなと感じました。

テレフォンフォローでこころがけていることは寄り添うこと

小松:通常の外来とは違う関わり方だからテレフォンフォローで感謝されることはまた新鮮に感じそうですね。ところで石部くんは、テレフォンフォローを実施するにあたって心掛けていることはありますか?

石部:心掛けていること…自分は1年目で先輩方と比べると知識、経験も多いわけではないので、ぼくにできるのは求めている人に一生懸命寄り添うこと。なんとか力になれるようにと話を聞いています。他にはあまり踏み込まれたくないと思っている人もいると思うので、フォローを強要しないようには注意するようにしています。

小松:石部くんの一生懸命さは患者さまにも伝わりそうですね。熱い!
井村さんはそんな石部くんのOJTですが、先輩から見てアドバイスはありますか?

井村:本当に石部くんはテレフォンフォローがんばってくれているなと思っています。1年目だと普通は断られるかもしれないと患者さまに声をかけるのが怖いと思いますが、勇気をだして声をかけてくれていると感じます。

石部:実際は断られることのほうが多いですけどね。

井村:それでも必要な人には声をかけてほしいので、断られることを恐れずにがんばってほしいです。

テレフォンフォローを希望する人はちゃんと見てほしい人

小松:OJTからのアドバイスありがたいですね。話は変わりますが、テレフォンフォローと薬局窓口での服薬指導との違いはありますか?

井村:電話だと声のトーンだけで判断しないといけないこともあるので、そこが難しく感じることはあります。抗がん剤治療中だと皮膚症状など見た目でわかる副作用もあります。ですので、電話では「これは大丈夫?」「こういう症状はない?」など細かく聞き取って判断しています。

小松:そういった問題点の解決にはテレビ電話の活用などが期待できますね。ちなみに症状はグレード評価などのスケールに沿ってヒアリングをしているのでしょうか?

井村:トレーシングレポートとして病院の先生に状況を正確に報告できるように、病院の中で活用している指標に沿ってヒアリングしています。

石部:ぼくが外来と比べてテレフォンフォローがいいなと思ったことは、結構本音を聞けるのかなと。薬局の窓口より自宅にいる時の方が心理的にリラックスしているのか砕けた感じで話してくれる気がしています。あと外来と違って待ち時間がないので、患者さまが時間に追われることなくゆっくりと話をすることができますね。

井村:確かに、せっかく電話をする時間をいただいているので、私は5分以上電話するようにしています。テレフォンフォローを希望する人はちゃんと見てほしいと感じている人が多いので、なるべくいろいろと話ができるように事前に情報をまとめるなどの準備をしてから電話をしています。例えば前回の化学療法時にでた副作用など調べたりします。
いろいろと話をする中で、「せっかくだから」とさらに話をしてくれると嬉しいですね。

小松:石部くんもテレフォンフォロー前は事前に準備して電話をしているのでしょうか?

石部:ぼくもこれだけは必ず聞こうと決めて電話をしています。薬疹で不安な方であれば薬疹の症状についてとか、カプセルが飲みづらいと言っていた方には「実際に飲めていますか?」とアドヒアランスを確認したりしています。
ただぼくはまだ経験が少ないので、「病院はどうですか?」「薬はどうですか?」など何気ない会話をして、患者さまが何を思っているのか知る努力をしています。
患者さまにこの人は話を聞いてくれると思ってくれたらありがたいですし、後にトレーシングレポートにつなげられたらと思っています。

テレフォンフォローで求められる役割や今後の期待

小松:テレフォンフォローだと外来より時間を気にしなくていいので、ゆっくりとお話ができて、より強く1on1の対応ができますね。
では最後に実際テレフォンフォローを経験しているお二人から見て、テレフォンフォローで求められる役割や今後期待できることを教えてください。

井村:今後の薬局は薬をお渡しして終わりではなくて、その後の服薬期間中の状況もしっかりと見ていくことが求められているのだと感じています。そしてテレフォンフォローを通して病院との連携を強化し、地域の医療をより良くしていくことにつなげていきたいです。

石部:今はまだテレフォンフォローという取り組み自体が世間に浸透していないと思うので、今後この取り組みを浸透させていき、「みんながテレフォンフォローを受けているなら私も受けてみようかな」と広がってほしいですし、もっと多くの患者さまの話を聞きたいと思っています。

小松:今はまだ地道な声かけが必要かもしれませんが、お二人のがんばりを聞いていて、5年後には薬局窓口の服薬指導と服薬期間中のテレフォンフォローはセットになっていくと感じました。是非この取り組みを広げていってくださいね。本日はありがとうございました