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減薬提案によるポリファーマシー解消への取り組み

寺澤 紗英

現在、高齢化により多剤服用する患者さまが増えています。
そんな中、減薬提案によるポリファーマシーの解消は薬剤師に期待される役割のひとつです。
2年目から積極的にポリファーマシーに介入し、服用薬剤調整支援料の算定をしている寺澤さんに話をうかがいました。

積極的なポリファーマシーへの介入にあたり、取り組みの背景を教えてください。

2年目の8月に店舗異動になった際、引継ぎをしてくれた先輩から「こういう加算(服用薬剤調整支援料)があるよ、もし良かったら頑張ってみて」と後押しをしてくれたことがきっかけでした。
当時は服用薬剤調整支援料の知識もなく、2年目の私には難しいのではないか…と思っていましたが、すぐにチャンスがやってきました。
最初の算定は、担当していた個人在宅の患者さまで、「先生にも言っているけど、なるべく薬は飲みたくない、減らしたい」というのが口癖でした。
医師も患者さまが薬を減らしたいことを知っているなら、もしかしたら減薬できるのでは?と思い立ち、当たって砕けろの精神で情報提供書を送りました。
するとその2週間後、減薬を提案した薬が処方から削除されており、結果、患者さまの服用の負担を減らし、服用薬剤調整支援料を算定することができました。この件が大きな自信となりました。

どのようにアプローチをしているか教えてください。

まずは患者さまと薬のことで話をして信頼を深め、その経過で減薬の話に触れると、「痛みはほとんど無いから鎮痛剤は一回やめてみたい」など、患者さま自身が要望をお話ししてくれます。
また、症状や検査結果から「下痢や便秘がないなら整腸剤を減らしてみませんか」「検査値が安定しているのでK補充製剤が減らせると思いますよ」など、こちらから提案することもあります。

減薬提案において心がけていることを教えてください

減薬提案をする際、患者さまからの減薬の要望や背景を細かく聴取することが重要となります。そのため、聴取しやすくなるように、患者さまとよく対話をして信頼を深めることを心がけています。
また、高齢者施設の処方箋を応需している店舗だったので、認知症などで会話が弾まない方も多く、そのような方々は施設スタッフを通して状況を聞くこともありました。
患者さまから減薬希望があれば、なるべく要望通りになるよう、根拠を示して減薬の提案をすることに注意を払っています。

苦労したことを教えてください。

最初の頃はたくさん薬を飲んでいる人の方が減薬しやすいだろうと思っていましたが、意外と減薬できそうな薬がないパターンが多く、薬を減らしたい要望を受けても、何を減薬したらいいだろうと迷うことがありました。
また、私自身が心配性で人見知りな性格ということもあり、上手く患者さまと対話ができるのか、減薬することで健康被害が起きたらどうしようか…などの悩みもありました。
しかし、患者さまが皆さん気軽にお話ししてくださり、しっかりと根拠をもって減薬提案をすることで、健康被害が起きることもありませんでした。
減薬提案の件数が増えていくと、誰がどの薬を減薬したか、いつ加算の算定が可能かなどの管理も苦労しました。

やって良かったと思う事例を教えてください。

やはり薬が減って嬉しいという声を多数いただいたことです。そのような声をいただくことでやりがいを感じ、モチベーション向上にも繋がりました。
また、医師も減薬に協力的だったということもあり、何回も情報提供書を提出することで「頑張ってるね」とお褒めの言葉をいただき、多職種連携の一員として役割を果たしていることを実感することもできました。

今後求められる役割、今後の期待を教えてください。

今、対物業務から対人業務へと薬剤師の役割は変化しています。その中で、これからは対人業務への積極的関与が求められ、患者さまとの対話がより重要になっていくと思います。
また、薬剤師が減薬したいと情報提供書を送っても、医師が減薬を決めなければ、ポリファーマシーの解消にはつながりません。そのため、医師への的確な情報提供や医師との関係づくりも重要だと考えております。
今後は誰もが減薬提案できるようになり、ポリファーマシーが減っていくことに期待をしています。